京都へ出張する機会があり、せっかくなのでラオス料理店「YuLaLa」を訪れた。京料理というより、郷土料理だ。
実は前日にも訪れたのだが、満席で入ることができなかったので、リベンジとなる。
本日は運良く入ることができたが、お店自体が少人数しか入れないため、予約はした方がよい。
入口にはラオスの国旗がある。手前に見えるのが個室で離れになっている。今回はカウンター席を利用した。
入り口にはNo Purfumeの注意書き。繊細な味を楽しんでもらいたいお店の拘りだろうか、それともアンチテクノミュージックか。某音楽グループ好きは入る時はご注意あれ笑
2名用のテーブル二席と3名のカウンター席がある。ラオスや食に関する書籍が店の片隅に置かれていた。
中尾佐助、吉田集而、横山智、石毛直道など東南アジアの発酵文化、フィールドワークに関する書籍を読んだことがある人なら耳にしたことのある著者が並ぶ。
入口を入って直ぐ横には「ラオス料理を知る、つくる」という書籍が置いてあった。
そう、YuLaLaを経営するのはこの書籍の著者である岡田尚也さんのお店だったのだ。発信力の強さから小松亭タマサートさんにばかり目がいっていた私の反省点である。
ラオスには過去1度だけ訪れたことがある。ヴィエンチャンに2日だけと、非常に狭い地域に、短期間なので知らないに等しい。メニュー表をめくり、注文を考える。
メニューは手書きのイラストと解説が付いており、本当は1つ1つ読み込んでいきたいが、会社の同期と訪れていたので流し見。
王道のカオソーイとソムパー、とりあえずの1品として焼きマッシュルームのチェオを注文した。1ドリンクオーダー制だったので、私はラオカオ 唐辛子風味、同期はビアラオを注文した。
盃が交わされ、食事開始。
チェオとはディップを指す、ラオスの代表料理のようだ。
味付けは香草と唐辛子パウダー?独特の香りが、口の中に広がる。ディップと言うより、炒め物のようで、キノコのプリッとした食感が癖になる。
初めて食す味だが、タイ料理を食べていることもあり抵抗感なく受け入れることができた。
盛られていた器は、中が空洞となった高さのある変わった陶器であった。どうやら奥さんは陶芸家のようで、オリジナル作品だと思われる。
ラオカオはもち米による焼酎なのだが、唐辛子風味なのはYulalaオリジナル。
赤唐辛子風味と青唐辛子風味の2種類あったが、指定しなかったので、どちらを飲んだかは分からない。ピリッとした刺激はなく、唐辛子感が無かったのが素直な感想。
そして、ソムパー。
もち米と魚を合わせた熟鮓である。
塩漬けした魚と米を合わせ、ブドウ糖が乳酸発酵により乳酸とその他有機物に分解され、その生成物同士が合わさることで複雑な味を生むそう。
滋賀の鮒熟鮓、紀州の秋刀魚熟鮓が有名なのだが、実は一度も食べたことがない。
おそるおそく口へと運んだ。
魚の肉は分解されているせいか、身の固さは殆どなく、ねっとりとしていた。
添えられていたパクチー、ラオスの高菜?と一緒に食べた。一瞬、酒粕を食べたときのようなモワッとした味がするが、吐き気が出るようなことは一切ない。
ちびちびと食べるのにちょうどよい塩味がする。
ラオカオと一緒に飲むと、モワッとする感覚と共に胃にソムパーが流れ込む。
初の熟鮓だったが、こんなに美味しいものだったのか。現代のような冷蔵庫が当たり前の時代に存在した人たちの保管の知恵には恐れ入る。
そしてメインディッシュのカオソーイ。
タイでは納豆の使われているカオソーイをカオソーイ・ナムナーとして区別しているが、ラオスのカオソーイはカオソーイ・ナムナーとは別物と言う扱いになっている。
メニュー表によると実際に現地で買い付けた納豆(トゥアナオ)を使用し、豚挽き肉、トマトと合わせてピリ辛味噌を作っているとある。
そして特徴的なのは米粉の平麺。バーンラックタイで食べた、カオソーイユアン(雲南カオソーイ)とも若干異なる。
口に含むと、納豆の臭みが少しするが、トマトによって上手く打ち消されている。麺はセンヤイの太麺で弾力もあり。
厚切りチャーシューも付いていたが、こちらは日本のラーメン店で食べる味と同じで、柔らかくて美味しかった。
隠れ家的な雰囲気で、ガッツリ量を食べたい人よりも、ラオス料理の複雑な味をゆっくりと味わい居心地の良い場所であった。京都を訪れるときには再訪したい。
晩秋の京の夜道に男二人。少し物足りなさもあり、次の店「スペースネコ穴」へと向かった。
スペースネコ穴
Yulalaから歩いて350mほどの距離にある場所にある、魔窟と呼ばれる居酒屋である。
結構前にネット記事をみて温めていたが、ずっと行けていなかった場所である。
現妻とのデート場所の候補にスペースネコ穴を出していたりと、今思えば不適な場所だった。(結局行けなかった)
因みに、ライン文面にある「実際に目で見るのが1番綺麗だね(^^)」の対象は永観寺の紅葉を指しており、妻ではない。誤解の無いよう明言しておく。
Google mapを頼りに、路地を進む。京都の町は車の無い時代に作られているからか、狭い。自動車大国トヨタ県である愛知とはどえりゃあ違いだ。
八田寮をスペースネコ穴と間違え、入りかける。雰囲気からしてお店ではなさそう。Google mapが示す位置とは位置が少し異なるので、そそくさとその場を立ち去った。
mapが示す位置に来てみたが、屋台いなばの赤ちょうちんはあるが、入り口が分からない。周囲を見渡すと三分の二ほど折れ曲がっている小さな看板があった。
薄暗い通路を進んでいく。大人一人通過するがやっとだ。ゴミなのか、インテリアなのか分からないものが雑然と置かれていた。
中には大きな部屋があり、既にコタツで6名ほどの人間が座っていた。店の仕組みが分からないので、とりあえず部屋に入り、コタツに腰かけた。
店内は大学の学生寮のようで、漫画やお酒がそころかしろに転がっていた。
「初めてか?」と槙原寛己に似た男が話しかけてきた。
「初めてですね。仕組みを分かっておらず、ちょっと混乱しています。」と伝えた。
話を聞く感じ、どうやら席料が1000円で、ドリンクを頼む毎に500円発生するようだ。食事はあるものを適当にという感じで、メニューはない。
生中を注文すると、冷蔵庫から瓶ビールを取り出してくれた。銘柄はサッポロ。飲みながら、他の方にも話を聞く。おつまみは机に置いてあった冷えたピザ。
その場にいた全員が一度はこの店に来たことがあり、中には毎日いる常連さんもいた。
年齢層は幅広く、20台前半~40台後半まで。
小6の友達がいる20台前半女子、ほぼ毎日いるヌシ的お兄さん、飲み歩きをしている姐さん、そしてマッキー。
後から全身黒色の服を着た兄貴、名古屋の大須辺りに住んでいたことのある犬好きの若者が合流した。
そして、店長のタマさん。
既に酔っ払い状態で、客に紛れ込んでいたので全く分からなかった。
イワタニ製のポータブルコンロを使い、シャコやサザエを振舞ってくれた。サザエの肝は砂が多かったが、身はプリプリしていて美味しかった。
誰かが持ってきただろう台湾のパイナップルケーキや黒砂糖をツマミながら取り留めのない会話をした。
暫くするとタマさんがビニール袋からゴソゴソと黒い塊をコンロに乗せはじめた。
網の上には見覚えのある頭が転がる。そう、鰻だ。近所の鰻屋から貰ってきたそうだ。
食べてみたが、鰻の香ばしさが強く、脂も乗っている、皮もパリッと焼かれており相当に美味しい。
あまりの美味しさに、身を余すことなくしゃぶり尽くしてしまった。
面白いことに、中国人は鰻屋で焦げ付いているとクレームを言うそうだ。そんなことなら食べなければというタマさんは話していたが、自分も同意見だ。
それなら刺身でも食べればいいと思う。
その後はダラダラとしながら、過ごした。
ここのトイレは最近の日本では珍しい、扉開放型。中秋ではあるが、夏ような爽快感がある。私にも一瞬の夏が訪れた。
タマさん曰く、暖簾はあるそう。そもそもこのお店なら人が入ってれば気付く。
スペースネコ穴という店名からも分かるが、店には猫が2匹いる。本日は1匹しかいなかったが、こたつの下で丸くなっていた。糞犬と違って可愛い。
ビール瓶を追加で注文し、飲んでると終電が近づいてきた。
小6の友達がいる20代前半とマッキーは付き合っていたようで、一緒に帰っていった。(マッキーさすが)
まだこの場にいたかったが、翌朝から仕事があるので帰宅することにした。
手を振り、サヨナラを告げてお店を去る。
同期はRPGの世界に迷い込んだと表現していたが、言い得て妙である。
知らない人と会話し、新しい情報を得て、そこからまた新しい場所を知る。
それもあってか、私は海外旅行のゲストハウスにいる感覚だった。
日本の原風景を思わせる京の街並み、紅葉、寺院も良いが、京を訪れたときはスペースネコ穴に足を運ぶことを勧めたい。
ジューガンマイクラップ