6:30起床。標高約1200mの高地だけあって、流石に寒い。体感だと15℃くらいかな。
宿の真横がメーサロン市場なので歩いて行ってみた。早朝から鍋を炒める音や人の話し声、鶏の鳴き声がして騒がしい。このような生活感ある喧噪は全く不快ではなく、むしろほっこりとする。
市場にはGWにチェンマイ金曜ムスリム市場でみた黒ゴマ餅(カオプックカー)が焼かれていた。円盤タイプと四角タイプがあるようだ。「一応正月だし、餅でも食べるかぁ」ということで、四角タイプを買ってみた。食べると甘さが広がる。何故か人参が入っており、人参の甘みに感動した。
追加で円盤タイプも購入したが、こちらは黒砂糖を上から振りかけてくれた。練乳チューブを吸うくらいの甘党なのでウエルカムである。
他にはビーフン炒めを食べてみた。シーユーダムで味付けされたセンミーやセンヤイに炒りゴマとパクチーが振りかけられた軽食だ。葉っぱで包んでくれたので持ち運びもしやすい。何よりもエコである。意外とボリュームがあって美味しかった。
宿へ戻ろうとしたとき韓国人のかたに「昨日あなたをチェンライでみかけました。あなたは何人ですか?」と話しかけられた。当方は全く記憶にないが、一体どこで見られたのだろう。割と目立っていることが分かったので派手な行動は慎むようにしよう。
市場にある給油タンク。ガソリンの色をみるのは人生初だ。また、ペースト状のトゥアナオも売られていたので購入。このペースで購入しているとトゥアナオ商人になってしまう。
時刻は7:30。朝日が照り始め、野犬も大人しくなる時間になったので本日の目的地メーサイへ向かうことにした。メーサイにはチェンセン、ゴールデントライアングルを経ていく予定だ。チェンセンには野犬が多く、ピットブルのような猛獣もいるというネット情報をみてビビッてしまった。そう、私はチキンなのだ。
犬は怖いが、スクーターと一緒に逃げ切るつもりだ。
ルートは行きに使用したR1130ではなく、R1089を使用することにした。同じ道を走るのがあまり好きではないのだ。知らない土地ならよりその思いは強くなる。
メーチェンまではひたすら走るだけになるが、走っていて気持ちがいい。ただ、標高に加えて風圧が加わるので寒い。ダウンとパーカーを着て丁度良かった。
ミスナールの体感温度計算式に20℃60%RH、バイク速度50km/hを当てはめると体感温度は9.7℃となる。そりゃ寒いわけだ。
途中でパートゥン温泉の横を通ったので、ついでに立ち寄ることに。足湯で有名な場所であるがタイのおばちゃん達は全身浴をしていた。(当然水着は着ていた)
シャワー文化のタイであるが、全身浸かるのも嫌いということではないようだ。
ここでは卵を購入し、自分で温泉卵を作って食べることができる。訪れたのが開店前ということもあり、叶わなかった。
お湯は60℃はあり、熱いがぬめりはない。何時間漬けているか分からない卵もあった。
アヒルボートならぬイルカボート。おしりを嗅ごうとしている糞犬オブジェ。
バイクの運転で冷え切った手先をお湯で温め、その場を後にした。
バイクの燃料が無くなってきたのでガソリンスタンドへ駆け込んだ。
タイも日本でいうレギュラーとハイオク、軽油を入れることができ、91、95、E20と表記する。更に91や95にはガソホールとガソリンに分かれており、数字はオクタン価を意味する。ガソホールはガソリンに10%エタノールを混ぜたもので、その分価格が安くなっている。
今回、CALTEXにて95ガソホールを給油したが、給油口にはしっりとGasoholと書かれている。95 Goldが純粋なガソリンだ。
ガソリンメータが半分無くなった時点からフル状態まで給油して95Bであった。
最初はセルフと勘違いしており、間違えてエマージェンシーボタンを押そうとしたところをスタッフのお兄さんに慌てて止められたのは内緒である。でもこれでガソリン切れの心配なしだ。
メーチェンに向けて走行再開する前に、腹ごしらえしにセブンイレブンでホットサンドを購入。チェンマイ到着初日に食べたものが大当たりだっただけに期待値が高かったが、見事に裏切られた。ソーセージ入りを買ったが、タイのソーセージはやはり蒲鉾感が強くて美味しくない。
ガソリンを入れてからメーチェンまでは1時間ほどで到着した。
走ってると野外トレーニングエリアを見つけたので軽く懸垂をした。蟹のような動きのようになるマシーンも触ってみたが、どこに効いているか分からなかった。
目の前にメコン川がみえる。チベットを源流とし、タイ、ラオス、カンボジア、ベトナムを経由して南シナ海へと流れ出る東南アジア最長の川である。流域周辺では米、漁業が栄えており、人々の生活と密接に関係している。
大自然を目の前にすると遠くへ来た感があって楽しい。
メーチェンには怖れていたほど野犬はおらず、安心して走ることができた。20分ほど走ればゴールデントライアングルに到着だ。記念撮影もしてみた。
2017年に高野秀行さんの「アヘン王国潜入紀」を読んでから、ずっと気になっていた場所である。
ゴールデントライアングルとはミャンマー、タイ、ラオスの国境が交わるこの地を指しており、かつて阿片と阿片を精製してつくる非合法モルヒネやヘロインの最大生産地であった。この辺りがアヘンゲシの栽培に適した環境であったこともあり、その生産量は世界の60~70%を占めており、まさに麻薬流出の源流であった。
高野さんはミャンマーのワ州にあるムイレ村に長期滞在し、アヘンの種蒔き~採集まで行っている。そして驚くべきは実際にアヘンを吸引して、中毒状態になっていることだ。当時のリアルな様子を実体験を交えて書いており、民族誌的エスノグラフィー、いわゆるフィールドワークの良さが表れた貴重な記録だと思う。
現在はケシ栽培を止めて、キャベツやコーヒー、果物などの換金作物に変わっており、完全に観光地の様相を呈している。
自分のお土産としてゴールデントライアングルTシャツを購入し、周辺探索をする。
メコン川を挟んで、ラオスとミャンマーを同時にみることができる。
そしてここからはラオスへ行くこともできる。入国手続きをしてから行く方法もあるが、ボートに乗って短時間ツアーとして行けるのだ。この短時間ツアーでは出国審査も入国審査も不要で、必要なのはお金だけである。
ツアー費用は800Bと行こうか悩む金額設定だ。でも会社や友達との下手な飲み会よりも良い思い出になるし、行かなかったことを後悔しそうだったので、奮発して行くことにした。(行くことを無理やり正当化した感はある)
お金を支払うと「ボート乗り場に5分後に来て」という雑な説明だけされ、救命具とチケットを渡された。気付いたらお金を渡したお兄さんがいなくなっていたので、不安を覚えながらもとりあえずボート乗り場に向かった。
待つこと5分で約束通りボートがやってきた。そして運転手はお金を渡したお兄さんではないか。騙されたかもと思っていたが、杞憂に終わった。
ボートが岸から離れ、メコン川に浮かぶ。
金三角経済特区を横目に走るのは不思議な感覚。金三角経済特区はラオス ボケオ県にある場所で、中国投資家がラオス政府から租借99年にて作った特区である。事業中心としてはカジノで、遠くからもKings Romans Casinoをみることができる。
実質、中国の植民地のような場所であり、ラオスでありながら中国語、中国元しか使えない。そして人身売買や薬物、違法動物売買(ex.象牙)などが横行している治安の悪いエリアになっている。
ラオス政府も見捨てた場所であり、パスポートを失くしたら最後、二度とでることのできない場所という噂も。
噂の真偽は分からない。中国語を学び、ここで生活する人と話すことで真実が見えてくるだろう。噂はあくまで噂でしかないのだ。
ボートがラオス ドンサオ島へ到着した。滞在できるのは20分ほどなので、島を降りてすぐのショッピングエリアを見て終わりだろう。
BVLGARIやVALENTINOなどハイブランドショップがあったが、どこも営業していなさそうだ。店内には服が残っていたので、不気味であった。
大阪万博の跡地もだが、かつて人が多く集まっていた場所に静けさが宿ると不気味さが生まれる。ゴーストタウンも同様だ。
ショッピングエリアではサソリ酒や蛇酒、周辺国の通貨、宝石やTシャツが売られていた。接客は少々強めで、しつこい。
しつこさに負け、Beer LaoのTシャツを購入し、船へ戻った。
仮にこのまま船に戻らず観光を続けたらどうなっていたのだろうか。船は定期的に来ているのでタイに戻ることはできそうだが、どのラインから不法滞在になるのだろうか。兎に角、ヒト気がなく、気持ち悪さの残る場所であった。
タイへと戻り、次に向かったのはアヘン博物館である。こちらもずっと行きたかった場所である。「アヘン王国潜入紀」を読んで思い浮かべていた光景を実際の光景と擦り合わせたかったのだ。
館内は撮影自由であり、入館料は50Bと安い。
アヘンゲシの成長過程から、アヘンの素の採取方法、アヘン吸引器、アヘン取引に使用する天秤と錘。ゴールデントライアングル最盛期のケシ畑を再現した場所・・・etc
知識とリンクした博物館は初めてだ。どの展示をみても面白い。
ポッ・ペンして、乾燥した液をガッ・ペンする。その時はグア・ペンを使用するのだ。
ここに来ることになったのは高野さんの1冊の本がきっかけである。本を読まなければ来ることはなかっただろう。本との出会いは人との出会い同様に大事なものであり、人生に影響を与えてくれる。本を読み続けることは、当然そのうような機会に触れ続けることになるのでこの先の人生も本を読み続けたいと思う。
そしていよいよタイ最北端の街、メーサイへと向かう。
ゴールデントライアングルからは単調な道なので、道に迷うことはないだろう。1時間ほど走ると到着した。
メーサイ想像以上に発展した街であり、R1を挟んで両脇に店が並んでいる。そのため、反対のお店に行くにはUターンするしかなく、渋滞が発生していた。車間はギリギリで、少しでも隙間ができると原付が通り過ぎていく。
当初はレンタカーでこの地を訪れる予定だったが、この光景をみると運転する自信がない。車で来なくてよかったと安堵した。
まずは本日の宿「Bua patumma Resort」へ荷預けに。部屋を案内してもらったが、原始的な佇まいだ。部屋は個室だが、高床式で蚊帳がついている。内鍵しかないのでセキュリティもガバガバ。予約時の宿写真とはえらい違いだ。
中心街から2kmほど離れた路地裏にあるので野犬も心配だ。一応周辺を走ってみたが、野犬はいなかったので一安心。
その後はバイクを走らせ、メーサイ市場へ行った。珍しいものこそなかったが、基本的な日用雑貨から食品まで幅広く売られており、物には不自由しない品揃えだった。
ただ、この辺りは栗の屋台が多くみられ、熱した石と栗が入った鍋を頻繁にかき混ぜている姿をよく見かけた。
そしてミャンマーとタイとを繋ぐメーサイ国境検問所の目の前に来た。ここを通ればミャンマーのタチレクという街に行くことができる。
国境前は車のナンバープレートもミャンマーの黒、タイの黄色、タクシーの赤と混在している。物価の安いミャンマーへタイから爆買いしに行くようだ。二ヶ国が混在するこの光景は目に焼き付けておきたい。
その後はタイ最北端の碑を見に行った。日本最北端、台湾最北端、そして今回はタイである。ある種の収集癖とも言える。私からすると七大大陸最高峰を登りたい人間も同様であり、リスクの程度が違うだけだと思っている。
最北端の碑を越えると、ミャンマーとタイを繋ぐ橋がみえてくる。ラーク川を越えればミャンマーに簡単に入国することができる。日本のような島国でこのような光景をみることはないので新鮮だ。ミャンマー側には侵入者を防ぐために拳銃を構えた軍の警備がいるようだが、見つけることができなかった。
バイクを適当な場所に停め、買い食いしながらメーサイの街を歩いてみた。
ソーセージが美味しそうだったので購入してみた。ソーセージは2種類あり、サイウアとサイクローンイサーンである。
サイウアは豚挽肉と香草、スパイスが混ぜ合わされたタイ北部のソーセージであり、レッドカレーソーセージとも呼ばれている。ピリッとするが、一緒に渡されるキャベツと一緒に食べれば辛さや油っぽさが緩和されるので美味である。
一方で、サイクロークイサーンは豚挽肉、米、春雨、ニンニクを腸詰めした後に数日発酵させたソーセージである。肉感が少なく、もちっとした食感。米や春雨、発酵期間により味が変わるのでお店によっては、サイクロークウンセンのように細かく種類分けしているようだ。今回食べたのは豚の臭みが少しあったので、個人的にはサイウアの方が美味しいと感じた。
歩いていると竹を焼いており、気になったので食べてみた。この食べ物はカオラムと呼ばれ、高野秀行さんの「辺境メシ ヤバそうだから食べてみた」にも登場する。
竹の中にココナッツミルクともち米、砂糖を詰めて焚火で2時間ほど炙れば完成する食べ物。竹を剥がして、そこら辺に捨てても微生物が分解し、自然に還してくれるエコな食べ物と紹介されていた。
自分が買った店では4種類の味があり、店員さんにおススメを聞いてみたが「どれもアロイアロイ」と言う。何となく一番真っ黒な物を選んでみた。
竹の中にはういろうのような餅が入っていた。若干、竹の繊維が付着していたがそのまま食べてみた。餅の上方には刻まれたココナッツが入っており、キャキシャキとモチモチが混在する食感。中間部からはココナッツがなくなるが、餅が甘くて美味しい。どうやら黒色は黒砂糖により呈色していたようだ。
カオラムを食べていると、横をサソリのオブジェがあしらわれた下品なタクシーをみかけた。それも結構な台数通り過ぎていく。
調べてみると、Wat Phra That Doi Waoという別名サソリ寺へ向かうタクシーであった。サソリはこの辺りに住む山岳民族(アカ族)の守り神として扱われており、守り神を祀った寺院のようだ。寺院にはスカイウォークが併設されており、ミャンマーとタイの夜景が一望できる。ロマンチストでもないので、夜景はそこまで好きではないが、せっかくなので見ることにし、夜を待つことにした。それまではサムローイジョーイマーケットでミャンマーからの雑貨をみたりして過ごした。
日が落ちかけたところで寺院へ向かったが、階段のきついこと。何故かテンションが上がってしまい、休みなく駆け足で登って行ったが肺が限界を迎えてしまった。タイ人が大勢集まる中で「ゼエゼエ、ハァハァ」としていた。
寺院は紫を基調としており、気品は感じられなかったが、紀元前179年に建てられた歴史ある寺院のようだ。
でもこんな場所にも奴(糞犬)はいた。下を見ずに歩いていると踏んづけてしまいそうだった。全く困った生き物だ。
寺院山頂には屋台も多く出店しており、参拝から観光までできる。そのため、家族やカップルが大勢いた。
スカイウォーク入り口に行ってみたがチケットがなく追い返されてしまった。でもスタッフの女性が丁寧にチケット売り場まで案内してくれて無事に購入し、入ることができた。値段は50B。
入る前にはガラスが汚れないよう、シューズカバー装着が必須となる。チケットを買えば一緒に手渡されるので個人的に用意する必要はない。
国境検問所を境にタチレクとメーサイの街が一望できる。写真では分かりづらいが、タイ側の方が光が多かった。光量と発展の度合いは相関性がありそうだ。
メーサイからチェンライへと続くR1が一筋の光線となっており、美しかった。
屋台で夕飯食べ、宿へと戻ることにした。既に20:30を過ぎており、国境検問所は閉まっていた。そのせいか、昼には道にずらっと並んでいた屋台も殆ど撤収している。
食べている人が多かった屋台にてトムヤム麺を頼んでみた。トムヤムスープに春雨麺と様々な種類のモツが入っている。
ハーブの香りが強く、想像していたトムヤムの酸味は少なかった。唐辛子も結構な量が入っており、唇が腫れる。苦手なレバーはスープと一緒に飲み込んだ。
真っ暗な中、宿へと戻り、昼間に購入したザクロを食べようとしたが手で割ることができなかった。ビニール袋に入れてコンクリートに叩きつけてみたが、スーパーボールのように跳ね返ってくる。
そういえばここはゲストハウスだった。共同の調理場より包丁を拝借し、半割。
ザクロの中にはトウモロコシサイズの果肉がびっしりと中に詰まっており、これを1粒1粒取る必要があるのだ。しかも果肉1粒ずつに種が含まれている。
1個のザクロからコップ1杯が埋まるくらいの果肉を採取することができた。種を吐き出すのが面倒くさかったので一気に口に含んで、果汁だけ吸って吐き出すを繰り返した。
酸味はあるが、ラズベリーのような酸っぱさはない。とにかく食べづらい印象だけ残ってしまった。コンビニで売られているザクロジュースのありがたみを知ることができた。
蚊帳に入り、横になっていたら寝てしまった。起きたら深夜2:00。身体が冷えていたので上着を着て、ペラペラのせんべい布団に潜り込んだ。
3:00までボーっと天井を見上げて、目をつぶる。時折バイクの走行音と共にそこら中で野犬が吠え始める。この時間帯は奴らにとってはゴールデンタイムである。
明日はチェンライに戻る。犬やバイクが五月蠅いが、それはそれでタイらしくて趣深い。
ジューガンマイクラップ