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タイ料理が大量に。

ルワンダでタイ料理屋をひらく 唐渡千紗

ずっと気になっていた書籍「ルワンダでタイ料理屋をひらく」を読んでしました。

タイ料理屋とタイトルに入っておりますが、タイ料理自体に関する記述は少なく、主となる内容は異なる文化であることによる、店を開くときの苦労や日本では想像することができない出来事がリアルに書かれております。

 

作者は唐戸千紗さんで、元々はリクルートで働かれており、所謂王道キャリアを歩んでいる方でした。

ルワンダにすむ友人宅を訪れ、今後の人生を考えたときに自分らしい人生を歩みたいという理由でルワンダへの移住を決めております。

 

唐渡さんですが、タイ料理は食べたことがある程度で、当然作ったこともないし、バンコクすら訪れた方が無い。しかも飲食店経営もしたことがないというゼロベースの状態でした。

移住を決めてからはタイ料理教室に通い、数冊飲食店経営マニュアルを読んだそうですが、それだけの状態で後は現地で試行錯誤しながら運営されておりました。

 

この試行錯誤の内容が面白いです。

なんせ、アフリカですので文化がかけ離れております。

日本人は約束したら律儀に守る人が多いですが、ルワンダでは口約束は高確率で破られます。どんな信頼できる人、明確な言葉であってもそれは変わらないようです。そもそも約束を破っている意識がなく、気が変わったくらいの感覚のよう。

ですので、書面で記録を残すことが大切だそうです。

 

また、指示したこと以外はやらない人が多い。というか日本では当たり前だと思っていることも細かく指示しないといけないそう。

以下は本書で出ていた例ですが、これら以外にも実際は想像できないことが起こっていたと推察します。

・レンジを掃除してとお願いすると、レンジを分解して水洗いする。

・店内の装飾品を勝手に売ってしまう。

・宅配品も宅配時間を超えたら自分で食べてしまう。

 

この苦悩を表現した単語が「OKY」となります。

お前が来て、やってみろ!

 

これだけで、苦悩が伝わってきますね。

実際に唐渡さんは撤退しようと考えておりましたが、自分でやりたいと日本を飛び出した思いや息子のことを思い、続行されております。

 

そしてルワンダで切り離せないのがルワンダ大虐殺、ジェノサイドと呼ばれるツチ族フツ族の争いです。

第一次大戦後に宗主国となっていたベルギーがツチ族を優遇、これにより軋轢が生じ、土地や食糧を巡ってフツ族が多くのツチ族を殺す大虐殺が始まりました。

当時の国連のルワンダ駐在のトップは、国連本部にこの争いに対して、SOSサインを出しておりましたが、本部はこれを無視しました。つまりは国連が大虐殺を止めないと決めたのです。このような歴史的背景もあり、ルワンダでは民族をきくことがタブーとされております。

本書ではこのジェノサイドを経験されたスタッフも登場し、事について触れられております。

 

自分たち日本人は気付くことが難しいですが、将来を選択する選択肢があります。

しかしながら世界には選択肢がない方も存在しております。

生まれ持った「選択肢」という権利をどう使っていくか。唐渡さんの行動をみて、改めて考えたいと思えることができる良き本でした。

 

ジューガンマイクラップ